昔NHK教育テレビ番組で ブッダ『真理のことば』”100分 de 名著” を見た。
番組を見ている時は分かりやすく説明があるので、
“なるほど”と思うが
結局、人間は「恨みや執着」からなかなか離れられない。
第1回 生きることは苦である…
第2回 うらみから離れる
第3回 執着を捨てる
第4回 世界は空なり
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/05_dhammapada/index.html
昔NHK教育テレビ番組で ブッダ『真理のことば』”100分 de 名著” を見た。
番組を見ている時は分かりやすく説明があるので、
“なるほど”と思うが
結局、人間は「恨みや執着」からなかなか離れられない。
第1回 生きることは苦である…
第2回 うらみから離れる
第3回 執着を捨てる
第4回 世界は空なり
http://www.nhk.or.jp/meicho/famousbook/05_dhammapada/index.html
ITC京都の2015年9月のコラムに投稿した原稿です。
1.はじめに
ITC京都には気力・体力が充実している会員が多い。しかし「団塊の世代」の私
は前期高齢者(65歳以上~75歳未満)であり、寄る年波には勝てず気力・体力
ともに衰えを隠せない。
このような折、梅田の古本屋で五木寛之の「林住期」という単行本を購入した。
私はインドに観光旅行に行ったり、四国霊場88箇所遍路の旅をしていたので「イン
ド人独特の人生観」に私の心がピンと反応してきた。「林住期」というタイトルは
聞き慣れないものだったが、読んでみると「人生設計・生き甲斐」を鋭く分析して
いる。著者の五木寛之は、私の「安易で世俗的な人生観」にレッドカードを突きつ
けてきた。
2. インドの四住期(学生期、家住期、林住期、遊行期)について
古代インドのマヌ法典によれば、インド人の人生は4期間に分けられる。四住期
では第3番目の「林住期」が人生のハイライトである。
2.1「学生期(がくしょうき)」
師について心身を鍛え、学習する時期。
まだ一人前とは見なされていない。
2.2「家住期(かじゅうき)」
就職し、結婚し、家庭を築き、子供を育てる時期。
世俗的な利益(金、地位・・)を求める。
一家の大黒柱となって家族や会社のために働く。
働き盛りで、体力・気力ともに充実している。
2.3「林住期(りんじゅうき)」
生き甲斐を求めて、真に人間らしく生きる時期。
世俗的な利益を離れて、解脱(世俗の迷いから脱却)を目指す。
2.4「遊行期(ゆぎょうき)」
家を捨て、死に場所を求める放浪と祈りの余生の時期。
四国 88箇所参りでの行き倒れ等。
“世俗的な利益”を求める「家住期」と“解脱”を目指す「林住期」の間には
人生観における大きなギャップがあり、急角度の“人生のヘアピンカーブ”であ
る。現在の日本の日常生活では“解脱を目指す”と言う発想はなかなか浮かんで
こない。ぬるま湯(快適で便利な世俗的生活)に慣れ親しんでいる私には“イン
ドの禁欲的な生き方“は、実践できそうもない。
3. 仏教の教え・・・“生老病死、苦、無常”
私の家族は終戦後中国から日本に引き揚げてきた。私は5人兄弟の一番下の5
番目の子供として福岡で生まれた。終戦直後の10年間は、日本はまだ混乱期で
もあり貧しく、衣食住ともに不足していた。
しかし1955年頃より高度経済成長期に突入すると、日本経済は右肩上がりで成
長していく。子供の頃の記憶では、ご飯は「かまど」に薪(まき)を入れて炊い
ていた。これが「電気炊飯器」となり、ご飯の準備は格段に便利になった。そし
て三種の神器(電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ)も普及して、日常生活は豊か
になっていった。文化面では米国進駐軍と一緒に「ハリウッド映画」の陽気で底
抜けに明るい米国文化が浸透してきた。若い時の私は楽観的に、人生は必ず「ハ
ッピーエンド」で終わるものと錯覚していた。
私のビジネスにおける人生ゲームは、1991年のバブル崩壊までは右肩上がりで
順調であった。いつの間にか好景気は永遠に続くと勘違いしてくる。リスクを無
視して“それ行けドンドン”でビジネスを推進してきた。今から考えると、バブ
ル景気はまさしく泡のように実体のない繁栄であった。その後バブルが崩壊し、
私はリストラや早期退社といった苦い経験をすることになる。
仏教は“極めて厳しい教え”を提示している。
・生老病死からは逃れられない
・人生は苦である
・人生は無常である
日常生活から「悲しい事、空しい事、嫌な事」には背を向けて、「楽しいこと」
ばかりに目を向けて人生を生きていく事は出来ない。
4.「林住期」には意識改革(気持ちの切り替え)が必要
「家住期」から「林住期」への人生の“へアピンカーブ”を曲がる時に、自分
の価値観を大きく変換する「意識改革」ができるか否かが人生の別れ道となる。
体力・気力・能力・容姿が大きく衰える黄昏(たそがれ)時の「林住期」になっ
ても、若い時と同様な「溌剌とした生き方」に執着していると「惨めな生き方」
になると五木寛之は警告している。お釈迦様の教えに逆らって、どんな若返りの
アンチエイジングを取入れたとしても、人生の時計の針を逆回転することはでき
ない。それでは意識改革を可能にするための「秘伝の奥義」は無いのだろうか?
「秘伝の奥義」は愛犬ラッキー(パピヨン、15歳の老犬)が教えてくれる。
愛犬ラッキーは私の師匠である。何故なら犬は雑念を捨てて、「頭を空っぽ」に
できる。執着を捨てることにおいては犬は人間よりも高等動物である。もし愛犬
ラッキーが人間に生まれていれば、立派な修行僧になれただろう。
4.1 「他人と自分を比較しない」
愛犬ラッキーは他人を羨ましがったり、ひがんだりはしない。「他人は他人、
自分は自分」であると割り切る。
4.2「現在のみを考えて、生きる」
愛犬ラッキーは「過去」の出来事や失敗を悔やんだりしない、また「将来」の
ことで余計な心配をしない。「今」を懸命に生きるだけである。
これさえ出来れば「私の悩みやストレス」はずいぶんと軽くなるはずである。
5. 若い現役世代へのアドバイス・・「家住期」における事前準備が必要
「家住期」は家族のためにパン(世俗的な利益)を獲得する時期である。しか
し人間はパンだけで生きるものでもない。ますます厳しくなる社会環境の中で
「現役世代」にとっての人生のハイライト(林住期)への準備はきわめて重要で
ある。ただし、その人生設計は個人毎にバラツキがあり一様ではない。人それぞ
れの「過去の経緯、人生観、宗教、健康状態、資金、家族関係・・等」により大
きく異なる。
しっかりした「家住期の土台」が無ければ、「林住期」はすぐに崩れてしまい
砂上の楼閣となる。「家住期」において入念な事前準備をしておく必要がある。
具体的には「自分自身と家族の健康管理、資金管理、家族関係、子供の自立の促
進・・」など幅広く整理整頓・始末しておくべきことが多い。
最後に、自分自身の人生設計の“前提条件や制約条件”を十分精査して、「林
住期」における価値観・生き甲斐を“自己責任”で築いていくことになるが、
“自分一人で”地道に積み上げていくしかない。
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■執筆者プロフィール
坂口 幸雄
・ITベンダ(アジアで日系企業の情報システム構築の支援等)
・JAIMS日米経営科学研究所(米国ハワイ州)、
・外資系企業
・海外職業訓練協会
・グローバル人材育成センター
・ITコーディネーター京都 会員
資格: ITC、PMP、PMS、CISA
趣味:犬の散歩、テレサテンの歌を聴くこと、海外旅行、お寺回り
(四国八十八カ所遍路の旅および西国三十三カ所観音霊場巡り)
以上